

胃・十二指腸漬傷はストレスが大きな原因で発生してくるとされます。ストレスが体に生じると、副腎髄質よりアドレナリンが分泌され、交感神経が緊張し、全身の血管が縮んで血流が悪くなります。当然、胃の粘膜にいく血管も縮み、血行が悪くなると胃の粘膜は脆弱化して、胃液の中の塩酸や.ヘプシンなどによる攻撃に耐えかね、ついには傷ついて潰傷化します。血流が滞った部分は体温が下がるので、潰傷のできる仕組みには「冷え」があるということになります。診察の時、ベッドに仰臥してもらい、上腹部を手指の先で叩くと、パシャパシャという振水音がする人がいます。これは、胃下垂があり、胃液という水分が多いということを意味します。「冷-水-痛」図の示す論理により、水分が多いことは「冷え」を意味しますが、潰蕩になる人は、ほとんどこの振水音が存在します。この水分は、現代医学的にいうと、胃酸過多で胃液が多い状態ということになります。「冷」と「水」が存在するから、当然、潰傷では「痛み」につながるわけです。とくに十二指腸潰蕩での「夜間痛」は、夜間には体温、気温がいっそう低下することを考えれば、十分に納得がいくことなのです。
医学は人間を、ほかの生き物とは違うものだとして特別視しがちですが、人間もこの宇宙の一部である地球上で生まれてきた一生命体であるからには、この宇宙の原則に従って生きています。ですから、人間の体は小宇宙とも呼ばれるわけです。人間の一生をこの「熱」の面から見ていくと、体熱の高い状態で生まれてきて、年齢とともに体温が低下していき、やがて体温が失くなった時に死亡する、という実に単純明快な論理になります。よって「子どもの体温が低下している」という事実は、たんに子どもたちの体に起きている異常のうちの一つとして捉えられるようなものではなく、心身の異常現象の根源的なものかもしれないわけです。小児成人病学の大家の某教授は、その著書の中で、「最近の子どもたちの体温はこの半世紀の間に、1℃の低下が見られる。……その原因については、はっきりしない……」というようなことを述べておられますが、実はこの「低体温化」こそが、子どもたちの体の不調、行動の異常などの根本要因である、とわたしはにらんでいるのです。